オペルグランドランドXの基本スペック(レビュー車両)
- パワートレイン:Disel Turbo / 1500cc / 4-Cylinder / DOHC / 130PS / 30.59kgf・m
- 駆動方式:FF
- トランスミッション:8AT
- タイヤ・ホイールサイズ:225/55R 18
- 足回り:Front マクファーソンストラット / Rear コンパウンドクランク式(トーションビーム)
- 定員:5名
- 安全装備:ABS / EPS / コーナースタビリティコントロール 等
- 燃料消費:低速路 17.2km/l 高速路 19.2km/l (ボクスホールモデル ガイド参照)
- 販売価格:24,520£(ボクスホールモデル ガイド参照)
- ストーリー:オペルブランドから発売されている中型SUV。グループPSA傘下のプジョー3008と同じプラットフォームを採用している。また同じくグループPSA傘下のイギリスのボクスホールVAUXHALLブランドにおいても、同じ車名にて販売を行っている。近年はPHEVモデルも登場し、環境性能に磨きがかかった。
グランドランドXの外装デザイン
ここ最近のトレンドを尊重すると、メッキを多用し、角の鋭いバンパーやグリルを装着。アルミホイールには黒い塗装、ボディーにも2トーンカラーを施すような事になるでしょう。
一方グランドランドXは丸みのある面を強く尊重し、黒いプラスチックパネルの多用、必要最低限のメッキ部品の使用で、過度な主張は避けています。良く言えばシンプルでコンベンショナルな仕様、悪く言えば個性的な部分は少ないと捉えられる事が多そうです。
外装デザインの特徴的な部分
一般的に『後部ドアウインドウが格子型に区切られ、一部しか上下しない』との設計が多く取り入れられています。
これはドアの内側にガラスを収めるスペースが限られており、上下する部分を限定する必要があるためです。仕方ないと言えば仕方ない仕様ですが、格子が存在するだけで、若干古臭さを感じる事があります。
一方グランドランドXは格子が存在せず、窓全体が上下に開閉します。そのためスッキリとした一体面を構成しているのです。またそのすぐ後ろには小型窓がはめ込まれているため、美しさと視界拡大の両立を実現しています。
●滑らかで角の無いボディ
グランドランドXは流行には便乗せず、2010年代初頭までに多く取り入れられた、丸い面を多用する外装設計を採用しています。従って前後左右どこから見ても、余計な凹凸がなく滑らかな曲面が続きます。
2010年代前半から後半にかけてのトレンドは、角張った威圧的なデザインでした。一般的に押しの強いデザインとも言います。日本車ばかりでなく、欧州車もこぞってその流れを取り入れました。しかし2020年代に入って再度丸さや、滑らかさを重視した外装設計が増えてきています。
コロナウイルス危機で全人類は強い心の痛みを受けましたが、それ故にアフターコロナの時代には”ダメージを与える・受ける”ような類の攻撃的ルックスは、受け入れられなくなる事が考えられます。
●フィン型アルミホイール
穴を全て埋めるかの如く、複数のスポークで構成されているのがアルミホイールです。離れて見ると、一つ一つのスポークがまるでフィンのよう。こちらも流行の黒いパーツや塗装とは縁の無い設計ですが、その美しさに惹きつけられます。
グランドランドXの内装デザイン
BMW・アウディ・メルセデスの御三家とドイツ車と比較すると、内装に使われる素材に高級感はありません。これはオペルというブランドが、そもそもそれらと対等に戦う事を求めていないからに他なりません。
しかしだからと言ってボタンの配置や、全体の設計に粗雑さ手抜きがあるわけではなく、外装デザインと同じくシンプルと美しさを追求しています。
内装デザインの特徴的な部分
スマートフォンに慣れた世代からすると『物理ボタンの無い方が自然』に感じる事が多々あります。一方自動車メーカーの考え方は少し遅れていて、高級車ほどボタンを増やして機能の多さやコストの高さをアピールする傾向にあります。
オペルは時代の動きを良く読み、大型のタッチパネルディスプレイを採用すると共に、物理ボタンは極力小さく配置しています。必要最低限のボタン配置であるが故に、操作に迷いは生じず初めての乗車でも戸惑うことはありません。
●見やすい標準装備のナビゲーションシステム
レビュー車両には標準装着のナビゲーション・ディスプレイシステムが装備されていました。
一昔前のヨーロッパ車のナビゲーションはあてにならないなどと言われましたが、現在ではそのような事は無くなり、むしろグラフィックの良さやソフトウェアの操作性では、日本車を追い抜くようになりました。
Apple CarPlayやAndroid Autoも上級グレードでは接続性があるとのことなので、最新デバイスやインターネット対応も十分です。
●防音・制振の徹底
グランドランドXにおいて最大のアドバンテージは防音性・制振性の高さです。値段が安い車はもちろんですが、ある程度の高級車でもロードノイズの発生は避けられない傾向にあります。
しかしこの車は低速で走る時も、高速道路で巡航する時にも大きなノイズが聞こえてきません。スピードを上げても、低速走行時と同じような静粛性が保たれるのです。当然不快な振動も良く抑えられており、長距離走行において疲労を感じにくい仕様です。
恐らくですが、プジョー3008と共用しているプラットフォームの完成度自体が高いのでしょう。
・テスラモデルS
・アルファード
・インフィニティQ50(日産スカイライン)
といった名だたる高級モデルに乗車する機会もありましたが、何故だかノイズの防御はグランドランドXの圧勝で、オペル車の良さを大変に印象づけるものになりました。
グランドランドXの運転フィーリング
搭載されているパワートレインは1.5リッターのターボディーゼル。1.5リッターでもトルクが30.59kgf・mもあるので、出足は俊敏。また8ATも採用されているため、加速も非常に滑らかです。
車重があるためかこのパワーでも坂道などでは不足を感じる場面もありましたが、普通に走る限りは全く問題がありません。ノイズや抵抗も少なく必要にして十分なエンジンです。
ステアリングフィールの面では、御三家のドイツ車には一歩及ばないところがあります。乗り心地の良さを狙っているためか、ステアリング操作の反応はゆったりとしたもので、高速コーナーではアンダーステア気味。曲がらないわけではありませんが、自分がイメージしたラインと少しズレがあります。
剛性は先に触れた静粛性や乗り心地からして十分なので、スポーツ性能よりも、快適性をより重視したセッティングを重視しているものと考察出来ます。
グランドランドXの総合評価
一見特徴の薄い汎用SUVですが、サイドや後方から眺めた時の美しいライン、徹底的に考慮された静粛性、欧州車らしい剛性、それらの特徴が大変に響きました。
似たような車格のSUVは沢山ありますが、ある部分だけが主張しすぎたり、コストの問題で追求が仕切れなかったり、足りない場所が何かしら出てくるものです。その点グランドランドXは日本円換算で300万円という価格ながら、バランスの良さが傑出しています。
幸いにして、2021年にはオペルブランドの日本再進出が決定しました。新型コロナウイルス拡大の影響で、プランが変更になる可能性もありますが、グランドランドXも初期ラインナップに含まれる予定ですので非常に楽しみです。